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autonomy in the administration of high school athletic clubs.
(Rep.Res.Cent.Phys.Ed.25:62-74,1997)

 

中学校・高等学校における運動部の「望ましさ」は、その評価基準をどこにおくかで、大きく異なるものである。誰が何をそこに求めるのかという目標や欲求、それに向かってなされる活動の量や質、それらをとりまく物理的・社会的環境等によって、様々な解釈が可能である。
そうした問題意識から、昨年度は、中学校・高等学校の運動部員の調査を行い、彼らは今、学校運動部に何を求め、何を期待しているのかを明らかにしようと試みた。いわば、活動者自身の「望ましさ」の基準を求めたのである。それによれば、部員は運動部にきわめて積極的な姿勢を有して活動を続けている。彼らは、基本的には「スポーツが好きだから運動部に入り、もっと十手くなりたいから」続けているが、中学生ではスポーツそれ自体のもつ楽しさ等の内的理由、高校生ではそのスポーツ活動に対する態度や姿勢、スポーツ活動をとりまく雰囲気等のいわば外的理由が強い傾向にあった。部活動から得られるものは、「忍耐力」「友情」「体力」であるが、男子では「体力」「技術記録」等のスポーツ自体と自分自身の関係から、女子では「友情」等のスポーツをめぐっての他者との関係から評価する傾向にある。また、学校運動部の理想として重要だと思う基準は、「人間関係」「白身の成長」および「練習の仕方」とそれを規定する「部の目標や伝統」であり、「部の目標」自体は、「自分自身の人間的成長」に求めるべきであるとしていた1)。
本年度の研究は、中学校・高等学校の運動部員自身の運動部活動に対するこうした評価や判断を、結果として肯定的に中学高校時代の運動部経験を評価していると考えられる大学生の調査を通して検証することにした。いわば、中学高校各時代には、それぞれの「望ましさ」があるのか、それとも、学校運動部には中学高校共通の「望ましさ」が存在するのかを、中学高校時代に運動部活動を経験した者の評価を通して検討することにした。

研究方法

学齢期にスポーツを「好きで、上手くなりたいと思い、続ける」には、学校運動部が未だわが国においては主流である2)。少子化に伴う生徒数の減少と教員の削減、地域スポーツクラブの充実等、中学校運動部をめぐる状況は極めて厳しい状況にある。しかしながら、一方では、そうした現状においても、ますます個性重視、多様化が求められる学校教育で、運動部活動に課せられた役割はより大きくなっているといえよう。
このような認識に立てば、より「望ましい運動部」を検討することは、重大かつ切実な問題である。とりわけ、生徒の立場から「望ましさ」を検討することが重要である。こうしたことから、本年度は、昨年度の中学校・高等学校の運動部員調査から得られたいくつかの知見を、実際中学高校時代に運動部を経験し、それを肯定的に評価していると思われる大学生を調査することで、さらに深く検討することにした。いわば、生徒の立場からの「望ましい学校運動部」の再考察である。
調査の概要は以下の通りである。
1. 目的:中学校・高等学校時代に運動部を経験し、それを肯定的に評価したからこそ進路決定に際し、「スポーツ」と関わる進学の道を選択したと考えられる大学生を調査することで、昨年度の調査結果から得られた知見を検証する。ある意味で「望ましい学校運動部」を経験した者を通して、中学校・高等学校運動部にはそれぞれの「理想」があるのか、それとも、共通した「理想」がみられるのだろうか。それらを明らかにする手がかりを得ることを目的とする。
2. 対象:調査主体の関係から、本年度の調査は、勤務校のスポーツ科学科に在籍する大学1年生および3年生とし、各学年から学籍番号によって半数を抽出し、調査対象者とした。対象者数は1年生132名、3年生144名、計276名である。
3. 方法:授業の開始時に対象者に調査票を配布し、授業終了後に回収する方法で行った。調査

 

 

 

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